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2006年8月 3日 (木)

昭和天皇と靖国問題その2 

 7月20日のカボチャ日記で「昭和天皇と靖国問題」を取り上げましたが、予想通り首相の靖国参拝反対の世論が大きくなっています。昭和天皇がA級戦犯合祀に反対していたからといって、世論が影響されることは素直に喜べません。しかし、これを機会に先の戦争の歴史について、改めて議論するよい機会だと思います。今日の朝日新聞の飯田進氏の靖国問題についての投稿(私の視点)は、共感できる内容でした。少し長いのですが以下に飯田氏の投稿を引用します。

昭和天皇の靖国神社にA級戦犯が合祀されたことについての発言メモが報道されたこともあり、小泉首相が8月15日に靖国神社に参拝するかどうかに内外の注目が集まっている。私は第2次大戦中、海軍民生部の要員として西部ニューギニアにいた。中国戦線から転用され急遽この島に投入された日本軍は、上陸と同時に補給路を断たれ、ほとんどの兵士がジャングルの中で飢え死にした。戦後、祖国に生還できたものは1割そこそこにすぎない。だが、このような惨状は私の任地だけではない。ガダルカナル島攻防戦以来、最も拙劣といわれる兵力の逐次投入が繰り返された結果、兵士たちはジャングルを右往左往し、行き倒れて死んだ。太平洋戦争全体の戦死者の最大多数は、餓死なのである。

遺族にとって、最愛の肉親が野垂れ死にしたとは思いたくない。それは人情なのである。誰も非難できない。しかし野垂れ死にした兵士を「英霊」と呼び、「御遺徳を顕彰する」との靖国神社の社是には見逃すことのできない、戦争美化の作為と欺瞞がある。首相も、人間としての素朴な情念のおもむくままに正しいと思って靖国参拝を行ってきたに違いない。その心情は多くの国民、とりわけ遺族たちの心の琴線に触れるものがある。だがそこからは、あれだけの兵士を無意味な死に追いやった戦争発起と戦争指導上の責任の所在は浮かび上がってこない。「英霊」という語感の中に見事に雲散霧消してしまっている。兵士たちはずさんきわまりない作戦を強いた軍中枢部を恨んで、息を引き取った。その遺骨の多くはいまだに密林に埋もれたままになっている。私たちがありったけの涙を注がねばならないのは、そのような無駄な死に対してではないか。

戦後の日本は冷戦構造の激化と、軍事的・政治的立場の変化に伴って、経済成長を偏重し、おぞましい歴史の暗部に目をふさいできた。おそるべき精神的怠惰さと言わねばならない。その象徴的存在として靖国神社があるのではないか。その事実をなおざりにして、他国の非難に応え、A級戦犯を分祀するとか、別の場所に斎場をもうけるとかは、本質的な問題解決にならないし、正しい政治選択の道でもない。それは双方に、不毛なナショナリズムをかきたてるだけである。多少の時間がかかっても、私たちがうちなる問題として問いただしていかなければならないのは、戦後なおざりにしてきた近現代史の徹底的な検証と、それに基づく国家、民族の根源的なありようである。いま、小泉首相をはじめ与野党の政治家諸氏に望むのは、そのことを国民に真っ正面から問いかけ、騒然とした議論を巻き起こす英知と勇気である。そこからしか、靖国神社問題の真の解決と、今後の日本の新しい展望は生まれてこない。

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